パニック障害を抱えている方にとって、目的地までの「移動」は非常に怖いものですよね。前回の記事で記載した通り、症状が最も酷かった時期の私は各駅停車の電車に1駅も乗っていられないほどでした。公共交通機関を利用している時や、高速道路を走る車内の閉塞感は大変恐ろしいです。かと言って、いつまでも移動を怖がってしまっていれば、自身の行動範囲が狭くなり、ストレスを解消するための外出先が限られてしまうのが現実です。
今回は、そんな移動に対する不安の根本的解決にはならないかもしれませんが、実際に利用しなくても、万一苦しくてどうしようも無くなった際に奥の手として「こんな逃げ道が有る」と知っているだけで移動の不安を減らせそうな事を5つ書いていこうと思います。
(※注)今回ご紹介する内容は、あくまで「最悪の場合はこんな逃げ道が有る」と頭の中に入れておくことによって不安を軽減できる可能性の有る事です。これからご紹介する内容の項目の一部は、お身体の不自由な方等、自身より優先すべき方々がいらっしゃる内容やみだりに利用すると周りへ多大なご迷惑をおかけし得るものも御座いますので、「最悪の場合に利用できる逃げ道」が存在するという意識付けのイメージでご覧くださいますようお願い申し上げます。
1.普通列車のグリーン車の利用
私が現在住んでいる名古屋地区には残念ながら無いのですが、都内に住んでいた時は予期不安が出てきた際は普通列車のグリーン車をよく利用していました。JR東日本圏内ですと、東海道線、横須賀・総武快速線、宇都宮線、高崎線、湘南新宿ライン、上野東京ライン、常磐線快速に適用されています。首都圏在住の方はお分かり頂けると思いますが、これらの路線って駅間の距離が長いんですよね。(笑)10分以上ノンストップで走り続ける区間もよく有りますね。私の場合、かつて東京23区の北の方に住んでいて横浜や湘南方面に行きたい時、湘南新宿ラインで早く目的地に着きたい気持ちと駅間が長いことの恐怖の間で葛藤し、結局、京浜東北線の各駅停車で長時間かけて向かうなんてこともよく有りました。(笑)
でも、各駅停車で向かうほど前もった時間が取れない時や、どうしても到着時刻を守らないといけない時ってこの様な路線に乗らざるを得ない場合って有りますよね。そんな時、不安でどうしようも無くなったらグリーン車の利用をオススメ致します。グリーン券の購入方法は複数有りますが、SuicaやPasmo等を持っていれば駅ホームで簡単に購入(というか、グリーン車を利用する権利をチャージするイメージ)できます。プラスでかかる料金も意外と安く、例えば50km以内であれば、平日は780円、土日祝は580円で利用できます。(乗車前にグリーン券を購入した場合の料金です。乗車後に精算すると割高になります。)グリーン車であれば、普通車両の様なガヤガヤした感じも無く、座席もリクライニング可能なので寝て過ごすこともできます。定期的に車掌さんや売り子さんも巡回しているので気持ち的にも安心できます。これらを考えれば、グリーン車のプラス料金は決して高くはないですよね。
2.グリーン車の無い在来線は最後部車両に乗車
これはあくまで意識だけの問題になりますが、私はグリーン車の無い在来線(名古屋地区では全ての路線になりますが)では出来るだけ最後部車両に乗車することを心掛けています。路線によってはワンマン運転等、事情が異なる場合が有りますが、車両の最前部には運転手さん、最後部には車掌さんがいらっしゃいます。運転手さんはその名の通り、電車を運転しているので苦しくなっていくら運転席のドアを叩いて異変を知らせたとしても振り向くことすら無理です。車掌さんは最後部に入って、ドアの開閉や安全確認、車内放送、トラブル対応等を担当しています。なので、私の場合は車掌さんに最も近い最後部車両が最も安心できるのです。もちろん異変を知らせたとしても電車の安全運行に関わる作業をされている場合も有るでしょうし、みだりに話しかける行為は安全運行に支障をきたす恐れが有るので、あくまで”心のお守り”としての話です。
3.新幹線多目的室の存在
意外とご存知でない方も多いみたいですが、各新幹線には多目的室が必ず1つ設置されています。前提条件として、新幹線多目的室はお身体の不自由な方が最優先ですが、空いている時には体調不良や授乳等にも利用できる個室です。多目的室の予約はお身体の不自由な方に限られるので、それ以外の方は新幹線車内で車掌さんに申し出て空いていれば利用ができます。実際、私自身も数ヶ月前に妻子と東海道新幹線に乗車した際、子どもへの授乳のため、妻が車掌さんに申し出の上で利用させて頂くことが出来ました。1つしか無いので、みだりに利用する所ではありませんが、万一の時にはその様な個室が存在することだけでも知っていれば、新幹線乗車時の不安が少しでも解消されるのではないでしょうか。
4.飛行機では客室乗務員さんに近い位置を意識
私自身の場合、以前の記事にも書きましたが、在来線は乗車に不安を感じることが有るのですが、新幹線や飛行機等、有事に備えて訓練をされている乗務員さんが同じ空間にいると考えると、安心感を感じることが出来、飛行機搭乗時には不安を感じたことが有りません。ただ強いて意識しているのは、何か有った際に異変をお伝えしやすい様に客室乗務員さんが近くに居る最後部座席を出来る限り希望するようにしています。座っている時に、足を伸ばしやすい非常口座席が落ち着くと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、「有事の際に緊急脱出の援助が出来ない方の着席は不可」の旨が各航空会社で必ず明記されていますので、避けましょう。日系の航空会社であるANAやJALの公式サイトにも「パニック障害の方へ」とお知らせが有り、いずれも「航空機旅行の可否を事前に主治医に必ず相談した上で、発作が起きた際に有効な薬を持参し、必要なお手伝いをお知らせください」という旨が書かれています。私自身、飛行機に乗った際、離陸前にパニック発作らしき過呼吸を起こしている女性の方を近くで見たことがありますが、その際も客室乗務員さんは慣れた様子でその方を落ち着かせる対処をしておられました。無論、乗務員さんも含め着席していないといけない時間帯も有りますが、洗練された乗務員さんが同じ空間にいらっしゃる事実だけで安心できますね。
5.高速道路は一生降りられない訳ではない
私自身も、自分が運転している時や同乗している時に関わらず、一定時間車を降りることが出来ない高速道路の走行に大きな不安を感じることがよく有ります。日本の高速道路の平均インターチェンジ間隔は約10kmと言われております。単純計算すると、10kmの距離を時速80kmで走ると約8分、時速60kmでも10分で到達することになります。都市部であれば、インターチェンジの数も多くなる他、点々と設置されているサービスエリアやパーキングエリアも含めれば、実際は平均して約5分ちょっとの間に1回の割合で”車を降りられる”チャンスが有る計算になるでしょう。約5分ちょっとであれば、快速電車とかの1駅分くらいなので何とか我慢できる範囲で、これだけ頭に入れておくだけでも気持ちが少し楽になりませんか?
一方で、以前の記事に書いた通り、実際に夜間の高速道路を一人で運転中に非常に怖い経験をした私としては、高速道路の運転は主治医と十分に相談したり、一般道である程度練習してからでなければ避けるべきだと思います。何故かと言うと、(詳細は以前の記事に書きましたが、)私は6年前に夜中高速道路を運転中に突然過呼吸の症状に襲われ、長いトンネルに入る寸前の路肩に何とか急停車してやり過ごせましたが、もしあの時が昼間でもっと交通量の多い時間帯であったりしたら、追突されていて他の車と事故を起こしていたかもしれないと感じるからです。
高速道路では約500mおき、トンネル内でも750mおきに非常駐車帯が設けられておりますが、運転中にパニック発作が起きた場合に非常駐車帯をルール上、利用しても問題が無いのかどうか気になったので、”愛知県 高速道路交通警察隊”に電話で確認してみました。結論としては、「無論、単なる休憩等で利用するのは厳禁だが、パニック発作等の急病で次のインターやサービスエリアまで安全に走行が出来ないと判断される場合、非常駐車帯を利用できる」との事でした。但し、非常駐車帯に停車した場合は後ろから走ってくる車両に知らせる為に、必ずハザードを点灯させ、非常停止板を非常駐車帯エリア内に置くこと。との事でした。(※2023年10月1日に愛知県高速道路交通警察隊に電話でヒアリングした内容です/他地域では異なる可能性が有ります)
ただ、非常駐車帯は決して広いスペースではありませんし、十分にスピードを落としてから進入しないと他の車両を巻き込む事故に繋がりかねない為、パニック発作が起きても極力次のインターやサービスエリアまでの走行を推奨、その自信が付く様になるまではそもそも高速道路を運転すべきでない。というのがあくまで私個人の意見です。
以上を意識することによって、交通移動に伴う不安が少しでも解消されれば幸いです!