5年前にパニック障害を初めて発症した時、私は2ヶ月間くらい自宅から外にほとんど出れず、一日中スマホを見ている引きこもり生活をしていました。パニック障害を抱える多くの方が「広場恐怖症」というものを持っているはずで、外出先で強い不安(息が上手く吸えない→このまま死んでしまうのではないかという恐怖)に襲われた時にすぐに逃げられなかったり、助けが得られなかったり、その場に都合良く横になれる場所や駆け込める病院が無かったりする状況や場所に居ることに恐怖や不安を抱く症状です。実際、私も当時は発作が起きてもすぐに自宅に逃げ帰ることの出来る範囲(つまり徒歩圏内)しか外に出ることが出来ませんでした。現在も通院や服薬をしている立場ではありませんが、一般の人と同じ様に会社や出張先に行って営業としてのお仕事が出来るまでに回復したエピソードをご紹介したいと思います。
1.男仲間との夜遊び(※注:少々お上品ではないエピソードの箇所が御座います。お目汚しをお許しください。)
パニック障害を発症して自宅に引きこもる様になってから、当時独身で一人暮らしであった寂しさと、この得体の知れない症状について理解して欲しいという想いから、私は包み隠さずに多くの友人達にLINEや電話で症状についての説明や悩み等を聞いてもらっていました。(なかなか言い出せないという方も多いと聞きますが、私の場合出来る限り周りの多くの方々に知ってもらった方が気持ちが落ち着くタイプでした)
そんな時、私と同じ様に名古屋から上京して都内で暮らしている中学高校の同級生(男)2人が私のリハビリ活動として食事に誘ってくれました。食事の場所は自宅から電車で約30分ほどの東京丸の内で2ヶ月も電車に一切乗っていなかった私にとっていきなりハードな課題でした。(笑)しかし、同級生2人からは「何回電車を降りても良いから、どれだけ到着まで時間がかかっても俺らは必ず待っているから。もし途中で本当にダメになった場合はそこまで迎えに行ってあげるからね」と励ましの言葉を事前にかけてもらっていました。食事の当日を迎え、彼ら2人と私の3人で構成されるグループLINEに「これから電車に乗ります」と乗車時に連絡を入れて2ヶ月ぶりの電車に乗り込みました。予想通り乗った後は心臓がバクバクしていましたが、私は「次は〇〇駅~」とか、「東京駅まであと〇駅!」等、1つ1つの駅到着のタイミングでLINEに連絡を入れていました。(笑)私の自宅最寄り駅から東京駅までの駅数分のLINEを発信したことになりますが、彼らはその1つ1つに「いけるやん!」とか「もう少しやな、頑張れ!」といった励ましの返事をし続けてくれました。電車に乗っている間はずっと彼らとのグループLINEを眺め続けていた状態ではありましたが、結局1度も途中下車することなく東京駅に着いた時は思わず涙が出てしまったのを今でも鮮明に覚えています。食事の場所は落ち着いた静かな場所を予約していてくれて、2ヶ月ぶりに対面で人とお話する嬉しさと楽しさから食事中はパニック障害のことなんて一切頭をよぎることは有りませんでした。食事が終わり、「よし、1つ階段を昇れたな。帰りも頑張って電車で帰ろう」と思っていたところ、彼らが突然「じゃあ、2軒目はショック療法にでも行きますか!」と言い出しました。「ショック療法って何だよ…」って思いながら、半ば強引にタクシーに乗せられ、着いた場所は華やかなキャバクラ店でした。(笑)キャバクラ店を前にして、「こんなに騒がしくて、しかも見ず知らずの女性とお話するなんて、それこそパニックだよ…」と思って尻込みをしている私を彼らは強引に店内に引き込みました。店内は若いお姉さん達の甲高い声や元気の良いボーイさんの声で案の定賑やかで、席に座るや否や電車内でのドキドキ以上の緊張が走りました。それでも、男というのは不思議なもので自分の横に綺麗なお姉さんが着くとそれまでの不安は一切頭の中から消えていて、あっという間に3時間ほど経過していました。お会計の金額に別の意味でドキドキしてしまいましたが、病院では決して味わえない最高のショック療法でした。(笑)世の中にはこんなに楽しいことが沢山有るんだと改めて実感しました。その日を境に、引きこもり生活から卒業することができ、少しずつ外出が出来るようになりました。パニック障害をお持ちの男性の皆様、一度騙されたと思って気心知れた方達といわゆる”男が喜ぶお店”に行ってみてください!お店に入る前は確かに不安で尻込みしますが、お店を出る時には別人の様に生まれ変わっています。(笑)行き過ぎには要注意です!
2.大学野球部同期との新潟旅行
近場の都内であれば徐々に外出が出来る様になってきた頃、大学野球部同期と5人で新潟へ旅行に行くことになりました。パニック障害を発症してから初めての新幹線だったので乗車前はやはり緊張をしていました。
同期達には自分のパニック障害を良い感じにイジってもらっていて、新幹線車内でも「パニくって暴れても大丈夫な様に3列シートの真ん中で固めといたろか」とか「そもそもお前、パニック障害になる前から一人でパニック起こしてる様なお調子者だったやん」等、イジられながら新潟までの約2時間はあっという間でした。日中の観光はそこそこ体調も大丈夫でしたが、疲れや眠気が出てくる夕方以降は発作への恐怖に支配されるようになり、スーパー銭湯でお風呂に入った後の夕飯ではほとんど横になって発作から耐えていました。(写真で一人だけ伏しているのが私です(笑))
その日の夜は同期の新潟の実家にみんなで泊まらせてもらったのですが、人生ゲームが思いのほか盛り上がってしまい、夜中の3時過ぎに就寝しました。翌朝は朝8時のフェリーに乗って佐渡島へ向かったのですが、寝不足状態はパニック障害にとって大敵且つ波に大きく揺れる高速フェリーに1時間も乗っていられるかとても不安でした。周りを同期に囲んでもらっていたおかげも有って、フラフラになりながらも佐渡島へ到着しましたが、「この島には発作が起きた時に助けてくれる医療機関は有るのかな…」とか「帰りもあの揺れる高速船に乗らなければ…」等と不安が一杯で一番のお目当てであった”弁慶”というとても美味しくて評判の回転寿司屋さんでは1皿しか食べられませんでしたが、何とか佐渡島まで行って帰ってくることができ、この経験もまた大きな自信となりました。大学を卒業してからも毎年1回は旅行を企画してくれる同期には本当に感謝しています。
3.家族とのカナダ旅行
これは4ヶ月間の休職期間を経て復職してから2ヶ月ほど経った2018年~19年の年末年始に挑戦したパニック障害発症後初の飛行機搭乗、初の海外旅行でした。発症前は3連休以上有れば、海外の色々な所を一人旅するほどの旅行好きでしたが、そんな生活からはすっかり遠ざかっていました。カナダ旅行を企画したきっかけは、当時バンクーバーに妹が留学しており、帰国してくる前に母と弟の3人で妹に会いに行きがてらカナダ観光をしようというものでした。少し前までは日本国内の普通電車で1駅さえも怖くて乗ることが出来なかった私にとって、これはある種の「最終試験」と思って、自分で全ての行程を手配しました。東京からバンクーバーへの移動でさえ飛行機で約10時間の長距離移動ですが、更に母が「一生の内に一度は見たい」と言っていたナイアガラの滝観光も行程に組み込み、バンクーバーからトロントへの片道5時間の往復移動もプラスし、この旅での総移動距離は約23,000kmという想像を絶するものでした。(笑)
そもそも自宅から成田空港まで一人で1時間半かけて向かうのにも多少ドキドキしている中、「パニック障害って英語で何て言うんだろう?panic,panic!で通じる訳ないよな(笑)」とか、「約10時間のフライトの中で発作が起きたらどうしようもないよな…」とか考えながら、成田空港の出発ロビーに到着しました。
飛行機に乗る前は非常に怖かったのですが、(私だけかもしれませんが)この飛行機に乗った時も、新潟へ行った新幹線に乗った時も同じだったのですが、有事に備えて訓練をされている乗務員さんが同じ空間にいると考えると、在来線の電車に乗るよりも何故か安心感を感じることができました。乗務員さんが同じ空間に居ない在来線の中でどんなに苦しみもがいても、そこに居る見ず知らずの方が助けてくれるとは限らないけど、飛行機や新幹線に同乗している乗務員さんであれば、たとえ医療的な処置が出来なくても自分に寄り添って落ち着かせてくれるといった安心感です。あとは、在来線とは違って座席がリクライニング出来るから等、居心地の問題も有るかと思いますが。
その様な発想の転換で、飛行機搭乗中は一度も発作らしき症状を起こすことはありませんでした。カナダ滞在中は疲れが溜まってくると時々予期不安を感じることが有りましたが、少し前まで自宅に引きこもっていた自分にとって海外の景色は人一倍素敵に映り、およそ1週間にわたる長旅を無事に終えることができ、これまでの中で最大の自信となりました。だって、日本語が通じなくて「パニック発作が起きている」と助けさえ全く求められない海外での時間を過ごせたんだから、日本語で「パニック発作で苦しんでいます」と声に出せば少なくとも意味は通じる自国での生活なんてとても楽な環境なのですから。
パニック障害(広場恐怖症等)で怖くて、外に出られないという方々、お気持ちは誰よりもよく分かります。毎日毎日、自宅のベッドで寝て起きての繰り返しで一日一日が過ぎていく虚しさを自分も感じていました。でも、自宅から1歩でも良いから踏み出さないといつまでも抜け出せないと思います。まずは一人でなくて良いから、自分が本当に心を預けられる方々と一緒に少しずつ外の世界の楽しさを感じてみてください!もし、家の中に居ても外出先でも、どうせ発作が起きるのであれば楽しいことを求めて外に出た方はお得ではないでしょうか?
めちゃめちゃ心に響きました!
私は妊娠中パニック障害と診断され、いま3年目に突入したものです。
私は日によって、散歩さえしんどい時もありますが、バスに乗って駅まで行きたい!とか、電車であそこへ行ってみたい!と、よく思います。思うことはできますが、バスに乗ることも私にとって大きな勇気が必要です。(´・_・`)!
でも、最後の文章を拝見して、たしかに、どうせどこにいても発作の恐怖があるなら、外出した方がお得だな、となんだか腑に落ちました☺︎
私は飛行機は乗れるのに、散歩でさえ怖かったり、友達と会うのも億劫になったりですが、終わったら必ず行ってよかったな、とか楽しかったなと毎回絶対に思って帰っています。
やらない後悔より、やる後悔ですね!
質問なのですが、お子様はいらっしゃいますか?行事など、ソワソワしたりはしないですか?私は親子遠足があり、行き帰りのバスなど、今から不安でいっぱいです。。。!
ブログいつも楽しみに拝見させてもらってます。これからも楽しみにしてます☺︎
ご閲覧、コメントいただき誠に有難うございます。
8/26にブログを始めてから初めてコメントを頂きとても感激しています、ありがとうございます!
電車やバスへの恐怖、非常に分かります。私は男ですが、女性の方がホルモンバランスが乱れやすいと聞きますし、より一層大変ですよね。
そうなんですよね、たとえ発作が起きたとしても外出が出来たとか会いたい人に会って楽しい時間を過ごせたっていう事実が、何と言うんでしょうか、きっとサウナに入った後の「ととのう」っていう感じなんですよね。笑(私はサウナの様な暑い所が苦手なので真の意味での「ととのう」は体感したことないですが、想像です。笑)
そうです、やらない後悔より、やる後悔です!
私は今年の3月に第一子の男の子が誕生したばかりで、まだ保育園に行ったりとかする歳ではありませんが、毎日お世話で大変です。自分の体調が悪い時は妻に頼ってばかりで、妻からすると0歳児と31歳児の2人の面倒を見させる形となり本当に申し訳なく感じてますが、子どもの為にも少しずつで良いから元気な父ちゃんでいたい!っていう気持ちで頑張ってます。お互い頑張りましょう!
今後とも何卒宜しくお願い申し上げます、周りに同じ様な悩みの方やパニック障害について是非理解して頂きたい方がもしいらっしゃれば記事のシェア等、大歓迎です!